大石浩之の数学ノート · 確率

この記事の単元:確率(⑧確率)

交通事故の確率、10月の件数だけで分かる?

· 8分で読める · 中学生向け

秋の薄暮、歩道に立つ中学生と離れた車のライト、手前のノートと記録カード。交通事故の記録と帰り道の判断を考える記事専用のイラスト。
記事内容をもとに生成したイメージ。実在の事故や場所を記録した画像ではありません。

Q. 交通事故の確率は、10月の件数だけで分かる?

自分が事故に遭う確率は、10月の件数だけでは分かりません。2021〜2025年の死亡事故記録12,844件から等確率で1件選ぶなら、薄暮の記録になる確率は1,555/12,844(約12.1%)。自分の通行について考えるには、事故がなかった通行も含む回数や、道・時間などの条件が必要です。

「秋の夕方は交通事故が多い」とニュースで聞いたら、帰り道が気になります。10月の件数を見れば、自分が事故に遭う確率も分かるのでしょうか。割り算を始める前に、何を全体にするのかを考えてみよう。

大石浩之(磐田市/不動産業)です。私は、数字を自分の暮らしに戻して考える数学を伝えたいと思っています。今回は警察庁の記録を使い、事故の「件数」と、自分について知りたい「確率」を分けます。資料の確認日は2026年10月2日です。

1. 10月の件数は、誰の何回分なのか

警察庁「薄暮時間帯における死亡事故に係る分析」は、2021〜2025年の5年間を集計した資料です。死亡事故は計12,844件。そのうち薄暮時間帯は計1,555件で、月別では10〜12月に集中する傾向が示されています。

ここで数えているのは、死亡事故の件数です。けがだけの事故を含む交通事故全体の件数でも、亡くなった人の人数でもありません。1件の事故に複数の人が関わる場合もあるため、「件」をそのまま「人」に置き換えないようにします。

警察庁の解説でいう薄暮時間帯は、日の入り時刻の前後1時間です。毎日同じ時刻に固定した区切りではなく、日の入りは月日や都道府県で変わります。「夕方」という言葉を、集計ではどの時間に区切ったのかまで読む必要があります。

10月の棒が表すのは、5年間の各10月をまとめた死亡事故の件数です。2026年10月の予測ではありません。そして、その棒には事故に遭わず通り過ぎた人の記録は含まれていません。ここが、帰り道の確率を考えるときの分かれ道です。

意外かもしれませんが、同じ事故統計でも、問いの作り方によっては確率を正確に計算できます。まず「自分の未来」から離れ、集計された記録の中から1件を選ぶ場面を作ってみます。

2. 全12,844件から同じ確率で1件を選ぶ

全12,844件の死亡事故記録から、どの記録も同じ確率で1件を選ぶとします。選んだ記録が薄暮時間帯のものになる確率は、1,555/12,844です。これは、過去の記録を選ぶという試行についての答えです。

2021〜2025年の死亡事故記録全12,844件を、薄暮1,555件と薄暮以外11,289件に分けた表。全記録から等確率で1件選ぶときの分母が12,844、分子が1,555であることを示す。
警察庁の集計を基に作成。枠の面積は件数の比ではありません。選ぶ単位は人ではなく、事故記録1件です。
全記録から1件選ぶ試行の数え方
記録の区分件数式での役割
全死亡事故12,844件分母
うち薄暮時間帯1,555件分子
薄暮以外11,289件残り

薄暮以外は12,844−1,555=11,289件です。薄暮と薄暮以外は重ならず、合わせると全体になります。「全体」と「その一部」の対応を、表で場合を整理する章のように、同じ単位でそろえてみよう。

1,555÷12,844×100は約12.1%です。百分率は小数第2位を四捨五入しました。等号で正確に表せる分数と、丸めた約12.1%は区別します。この割合は5年間全体の値で、10月だけの値ではありません。

なぜ件数を割ればよいのでしょう。全記録に1から12,844まで別々の番号を付け、どの番号も等しい確率で選ばれる仕組みを考えるからです。薄暮に当たる番号は1,555個。全番号のうち、条件に当てはまる番号の割合を求めています。

「薄暮」と「それ以外」の2通りだから確率は半分、とはできません。等しい確率で選ぶのは2つの区分ではなく、12,844件それぞれです。同様に確からしいとは何かを確認すると、数える前の条件が見えてきます。

ニュースで目立った記録だけを選ぶ方法では、各記録の選ばれやすさが同じとは限りません。分子と分母が正しくても、選び方を変えればこの計算は使えません。計算の正しさには、数字だけでなく試行の条件も含まれます。

一部の人を調べて全体へ広げる場合は、分母に加えて選び方も確かめます。標本調査で30人から全校を考える条件では、無作為抽出と推定のばらつきを図で説明しています。

3. 帰り道の確率なら、分母に通行を入れる

自分が1回の通行で事故に遭う確率を考えるには、事故が起きなかった通行も含む全体が必要です。死亡事故の記録だけを集めた12,844件には、その全体がありません。約12.1%を、自分の1回の帰宅に当てはめることはできません。

事故記録から選ぶ場合の分母は事故の記録だけ。通行を調べる場合の分母は事故ありと事故なしの両方の通行。後者の全通行回数は今回の資料から分からないと示す比較図。
分母に含める対象を比べた模式図。丸の個数は実測値でも事故率でもなく、対象の種類だけを示しています。

例えば、ある道の一定期間について、歩行者1人が決めた区間を通り終えるまでを「1回」と決めます。その全通行回数のうち、事故に遭った通行が何回だったかを調べれば、通行あたりの観測された割合になります。往復は別々に数えるなど、回数の定義も先にそろえます。

ここでは通行回数の実データがないため、具体的な事故率は計算しません。死亡事故の件数をそのまま分子に入れるのも不適切です。事故1件に歩行者が複数いれば、事故の件数と事故に遭った通行の数は一致しないことがあるからです。

分母を確かめるときは、分子がその全体の一部になっているかも見ます。自転車の通行だけを分母にしたのに、歩行中の事故まで分子に入れると、割合の対応が崩れます。同じ期間、同じ区間、同じ移動方法で数えた記録かを、表の見出しで確かめます。

観測した割合が得られても、それが自分の次の通行の確率にそのままなるわけではありません。道、時間、天候、徒歩か自転車かなどの条件が違う可能性があります。過去の割合から将来を見積もるときには、比べる条件が似ているかを調べます。

「全記録から等確率で選ぶ」という人が決められる条件と、「現実の通行の条件が似ている」という確かめるべき仮定は別物です。後者は、記録の数を増やすだけでは解決しません。多数回の試行と割合の章でも、1回の結果と集めた結果を分けて学べます。

もし知りたいのが「1年間で事故に遭う確率」なら、1回の通行とはまた違う問いです。何回外に出るかや条件の変化も関わります。期間を決めずに「私の事故確率」とだけ尋ねると、求めたい量そのものが定まりません。

4. 件数を暮らしへ戻すには、足りない数も読む

警察庁の資料の良い点は、集計期間と時間帯を明示し、死亡事故がいつ起きたかを確認できることです。薄暮の記録を調べる入口として使えます。一方、通行回数あたりの確率を示した資料として読むと、答えの範囲を越えてしまいます。

私は、数字を見る側にこそ一つ注文したい。件数を見たら、「何回通ったうちの件数か」と書き添えてほしいのです。分母が載っていなければ、不明と残せばよい。分からない欄を想像で埋めるより、どこまで言えるかを区切るほうが、判断の材料になります。

私はこう考えます。数字は割り戻してこそ暮らしに使える。ただし、割る相手を勝手に作ってはいけない。 不動産の費用でも、総額と1軒あたりの負担は別の問いです。交通事故でも、記録の中の割合と、帰り道1回の見通しを混ぜたくありません。これは私の判断であり、事故の相談を受けた実話ではありません。

私は、個人の確率が出せないまま、どこまで帰り道の判断に結び付けるかには迷いがあります。怖さだけを大きくしたくない一方、分母がないことを理由に注意まで手放したくはない。そこで、確率として未確認の部分と、すでに示されている安全上の助言を分けて扱います。

警察庁の解説は、薄暮に互いの発見が遅れやすくなると説明しています。歩行者や自転車利用者には、明るい服装や反射材・ライトの活用を勧めています。個人の確率を計算できないことは、こうした助言が不要だという意味にはなりません。

5. 今日のニュースに、分母の一行を足す

交通事故の数字を読んだら、今日できる確認は「何を、いつ、何件中で数えたか」を一行にすることです。今回なら「2021〜2025年の死亡事故12,844件中、薄暮時間帯1,555件」。その下に「全通行回数は、この資料では不明」と書きます。

次に、記事の見出しを自分の言葉で読み替えてみよう。「10月の件数だけで、自分の確率は分かる?」には「分からない」と答えられます。「集計済みの全記録から等確率で1件選び、薄暮の記録になる確率は?」には分数で答えられます。問いを整えるだけで、同じ資料の使い道が変わります。

数字の意味と行動を分ける読み方は、降水確率と降水量の違いにもつながります。1回の結果を約束しないという点は、コイントスで3回連続表になる確率でも確認できます。事故がなかった日が続いたから次は必ず遭う、と考える根拠もありません。

帰る前には、使うライトや反射材の状態を家族と確認できます。確率の計算を終えるのを待つ必要はありません。統計や案内は更新されるため、最新の警察の情報も確認してください。この記事は数の読み方の学習用で、個別の通行の安全を保証するものではありません。具体的な道路の危険や通学の判断は、学校・保護者や地域の警察に相談してください。

事故の件数とは別に、速度から距離を考える練習は、制動距離の求め方、速度2倍で距離は何倍?で扱います。同じ条件という仮定を置き、空走距離と制動距離も分けて読みます。

よくある疑問

交通事故の件数を人口で割れば、自分の確率になる?

そのまま自分の確率にはなりません。事故件数は人数と違い、1件に複数人が関わる場合もあります。人口あたりの件数という比較指標は作れても、1人が1年間に事故に遭う確率とは区別が必要です。自分について考えるなら、期間、移動の回数、道路や時間帯など、知りたい問いと集計の条件をそろえます。

約12.1%なら、帰り道100回で12回事故に遭う?

いいえ。約12.1%は、2021〜2025年の死亡事故記録12,844件から等確率で1件選んだとき、薄暮の記録になる確率です。通行を100回したときの事故回数を示す数ではありません。また、同じ選び方で記録を選び直す試行でも、100回中必ず12回になるという意味ではありません。

10〜12月以外なら、夕方の心配はいらない?

そうは読めません。10〜12月に薄暮の死亡事故が集中する傾向は、それ以外の月に事故が起きないことを意味しません。薄暮は日の入り前後1時間で、時刻は月日や都道府県で変わります。月だけで安全を決めず、警察庁の案内を参考に、ライトや反射材の状態、通る道や時間を保護者と確認してください。

参考にした一次資料

資料確認日:2026-10-02。例題の金額・人数・場面は学習用の設定です。実際の価格や学校の決まりは、それぞれの条件を確認してください。