大石浩之の数学ノート · 数
この記事の単元:正負の数(①数)
潮位と標高の違い、2つの0を図で比べる

Q. 潮位120cmは標高120cmと同じ?
同じとは限りません。潮位は海面の高さで、潮位表基準面からの高さとしても標高としても表示できます。仮に基準面の標高が−100cmなら、そこから120cmの海面は標高+20cmです。比較する前に、基準の0と単位をそろえます。
海の情報に「潮位120cm」、地図に「標高」と書かれていたら、その数字をそのまま比べてよいのでしょうか。同じcmでも、測り始める0が違うことがあります。海面が動いていなくても、表示を切り替えただけで数字は変わります。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。私は、数字を見たときに「何を基準にした量か」まで読めることが、数学を学ぶ力になると考えています。ここでは実在の港の数値を使わず、上向きを正とした学習用の仮の例で考えます。
1. 潮位と標高の違いは、測る対象と0から読む
潮位は海面の高さを指し、標高は基準となる面から測った高さの表し方です。潮位も標高で表示できます。「潮位は海、標高は陸だから比べられない」と決めるより、表示がどの基準を使っているかを見るほうが正確です。
気象庁「潮位表 解説」では、潮位を「潮位表基準面からの高さ」または「標高」で表示し、単位はcmとしています。潮位表基準面は地点ごとに違います。以下では、この二つの表示を比べます。海の高さの基準が世界中で2種類だけ、という意味ではありません。
標高の基準には主に東京湾平均海面(TP)が使われます。ただし、離島などの一部地点は別の基準です。目の前にある、その瞬間の海面をいつも標高0にしているわけではありません。波や潮の動きに合わせて、地図の0を毎回動かすのではないのです。
一方、潮位表基準面は、気象庁の説明では大潮の平均的な干潮面に対応する基準です。名前に「0」があるからといって、海水がなくなる面ではありません。正負の数の教材「0」で扱う、比べる出発点としての0とつながります。
まずノートに「潮位表の0」と「標高の0」を別々に書こう。次に、海面を一本の線で描きます。二つの0から同じ線まで測ると、長さが違う場合がある。数字の違いを考える出発点は、ここです。
2. 仮の基準面−100cmから120cm上がると?
潮位表基準面の標高を−100cm、そこから海面までの高さを120cmと仮定すると、海面の標高は+20cmです。数値はすべて説明用です。どこかの港の換算値や、2026年9月29日の潮位を表してはいません。
図の左は標高の目盛りです。0から下へ100cm進んだ位置が−100cm。そこが、この例の潮位表の0です。右の目盛りでは同じ位置を0cmと読みます。左右は同じ高さにそろえ、1目盛りの長さも同じにしています。
潮位表の0から上へ120cmたどると、最初の100cmで標高0に着きます。残り20cmを上へ進むので、海面の標高は+20cmです。図の矢印は高さの隔たりをたどる補助で、海面が今120cm上昇した、という観測記録ではありません。
海面の標高=基準面の標高+基準面からの高さ
−100+120=+20(cm)
等号でつないでよいのは、標高0から基準面までの位置と、基準面から海面までの変化を足すと、標高0から海面までの位置になるからです。長さの単位はcmでそろえます。120という表示を見て、標高120cmと読み替えることはできません。
小学校で学んだ120−100=20でも、残る20cmは確認できます。正負の数を使うと、「出発点は0より100cm下」という条件を−100で式に残せます。場所と加える量を分ける練習は、数直線を歩く教材で試せます。
逆向きにも確かめよう。海面の標高+20cmから、基準面の標高−100cmを引くと、20−(−100)=120cmです。図では−100から0までの100cmと、0から+20までの20cmを合わせた隔たりです。符号の丸暗記ではなく、どの二点の差を求めたかを残します。
3. 0を変えても、同じ二つの海面の高低差は変わらない
基準を変えると高さの表示値は変わりますが、同じ二つの位置の高低差は変わりません。同じ地点で基準面を固定し、単位もcmでそろえた場合を考えます。今度は、海面Aと海面Bという二つの高さを仮に置きます。
潮位表基準面の標高は、引き続き−100cmです。海面Aは基準面から120cm、海面Bは80cmとします。標高に直すと、Aは+20cm、Bは−20cm。Bは潮位表の0より上にありながら、標高の0より下にあります。
潮位表基準面からの高さで引くと、120−80=40cmです。標高の表示で引いても、20−(−20)=40cmになります。−20から0まで20cm、0から+20まで20cmあるので、AはBより40cm高いと読めます。
途中で列を混ぜ、Aの120からBの−20を引くと140になってしまいます。計算自体は120−(−20)=140ですが、違う0からの数字を引いたため、二つの海面の高低差にはなりません。答えの数だけでなく、列の見出しも検算の対象です。
負の標高は「水が足りない」「海が消える」という意味ではなく、標高の基準より下という位置を表します。正負は良し悪しの印ではありません。位置の比較を確かめたくなったら、数の大小を比べる教材で、0の両側の数を見直せます。
同じ瞬間でも日本と英国で時計の数字が違うことを扱った時差を数直線で読む記事とも似た見方です。ただし海の図が表すのは高さで、時差の図は時間です。何を測るか、単位は何かを言葉で添えると、比喩と実際の量を区別できます。
4. 夏から秋の潮位と、予測値・実測値を分ける
気象庁「潮汐の仕組み」は、日本の沿岸では広い範囲で夏から秋に潮位が高くなる傾向があり、地域差もあると説明しています。季節による高さの変化と、表示の0を切り替える操作は別です。2026年9月29日に資料を確認しました。
季節変化の説明から、特定の港で何cm高くなるかは分かりません。また、秋なら毎日必ず前日より高い、という意味でもありません。季節の傾向は、ある日時の具体的な潮位を代わりに答えてくれる数字ではないのです。
気象庁の潮位表は、天文潮位という予測値を掲載しています。気象などの影響を受ける実測潮位とは異なります。基準をそろえる計算が正しくても、予測値をそのまま実測値として扱うことはできません。「どの0か」と「予測か実測か」は別々に確認します。
さらに、潮位表基準面と観測基準面も同じではありません。気象庁は、標高への換算に使う値を年ごとに更新しています。今回の−100cmを別の地点や年へ持ち込むことはできず、実際には対象地点の説明と、その年の換算値を読みます。
この記事の図は、基準と加減の関係だけを取り出したモデルです。波の高さ、地形、天候などを含む安全判定の図ではありません。海辺へ出る判断や避難の判断には転用せず、最新の気象庁の防災情報と自治体の案内を確認してください。
5. 数字の隣に「どの0から」を書いてみる
高さを比較する前の確認は、表示の見出しを数字と一緒に写すことです。「120cm」だけでなく「潮位表基準面から120cm」と書きます。地図の標高と比べるなら、双方の基準、単位、対象地点を確かめてから、同じ基準へ直します。
気象庁の潮位表で、基準面からの高さと標高を切り替えられる点は、数字の意味を確かめる助けになります。ただ、数字だけを切り取った画像では、表示の種類が見えないことがあります。見出しや注記まで一緒に読むひと手間を残したいところです。
私はこう考えます。基準の分からない数字を、そのまま比較しない。 不動産の金額を読むときも、総額と面積あたりの額では、持ち主にとっての意味が違います。高さの数字でも、具体的にどこからどこまでの量かに戻したい。計算が合っていても、比べる条件を取り違えた答えは判断の材料になりません。
私は、最初の説明に基準面の名前をいくつ並べるかには迷います。用語を増やせば、かえって海面の一本の線が見えにくくなるからです。それでも「0が違う」という条件だけは省きません。まず図で位置をつかみ、実物の表では正式な名前を確かめる順でよいと考えます。
今日の練習として、仮の基準面−100cmから海面が60cm上にある図を描こう。上向きを正とし、標高0に届くかを先に予想します。−100+60=−40cm。0まで40cm届かない位置に点があれば、計算と図が一致しています。
最後に「基準面からは60cm上、標高では−40cm」と声に出せたら、二つの表示を読み分けられています。数字が変わったから海面が動いたのか。それとも0を変えただけなのか。その問いを持てることが、海の情報を自分で読む一歩になります。
よくある疑問
潮位と標高は同じものですか?
潮位は海面の高さ、標高は基準面から測った高さの表し方です。潮位も標高で表示できます。気象庁の潮位表には、潮位表基準面からの高さと標高の表示があります。同じ海面の数字でも、どちらの0を使ったかによって値が変わります。まず表示名と単位を確認します。
潮位を標高に直して負になったら、どういう意味ですか?
標高の0より下に海面があるという意味です。水がなくなったという意味ではありません。学習用の仮の例では、標高−100cmの基準面から80cm上の海面は、標高−20cmです。潮位表の0より上でも、標高の0より下になる場合があります。正負は安全か危険かの判定でもありません。
潮位120cmを、地図の標高とそのまま比べてよいですか?
120cmがどの基準からの高さかを確かめる必要があります。潮位表基準面からの値なら、対象地点・年の換算値を確認して標高に直します。単位や標高の基準もそろえます。ただし、比較の計算だけで安全とは判断できません。予測値と実測値も区別し、最新の防災情報を確認してください。
参考にした一次資料
- 気象庁「潮汐の仕組み」
2026年9月29日確認。潮位の季節変化と地域差を確認。公表日の記載なし。
- 気象庁「潮位表 解説」
2026年9月29日確認。基準面からの高さと標高のcm表示、地点別の基準、年ごとの換算値更新、予測値と実測値の区別を確認。公表日の記載なし。
資料確認日:2026-09-29。例題の金額・人数・場面は学習用の設定です。実際の価格や学校の決まりは、それぞれの条件を確認してください。