大石浩之の数学ノート · データの活用

この記事の単元:データの分布(⑨データの活用)

貯蓄の平均値と中央値、2025年はなぜ違う?

· 8分で読める · 中学生向け

架空の中学生が自宅の机で、5軒の家の形のカードと木製のコインを眺め、1軒だけ大きい金額のときの平均と中央を考えているイラスト。コインの枚数は統計や本文の値を再現していない。
記事内容をもとに生成したイメージ。家とコインは概念を表す小道具で、本文の5世帯の金額や実際の統計を再現した図ではありません。

Q. 平均貯蓄2059万円って、普通の家の金額なの?

平均値は合計を世帯数で割り、中央値は小さい順の中央を示します。2025年の二人以上の世帯では平均2059万円は貯蓄0を含み、中央値1264万円は除きます。対象をそろえると中央値は1167万円。大きな貯蓄額が平均を押し上げるため、平均を普通の家の金額や家計の合格点とは読めません。

「家庭の貯蓄は平均2059万円」とニュースで見たら、普通の家にはそのくらいのお金があるのか、と気になるかもしれません。ところが、2025年の統計には中央値1264万円、別の中央値1167万円も出てきます。計算間違いなのでしょうか。まず、平均と中央が何を表しているか、5世帯の点を描いて比べてみよう。

大石浩之(磐田市/不動産業)です。私は、ニュースの大きな金額を、家計を考える材料に戻す数学を伝えたいと思っています。この記事は中学1年「データの分布」につながる、平均値と中央値の比較です。資料は2026年10月5日に確認しました。

1. 2025年の貯蓄には、対象の違う3つの数字がある

総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)」の2025年平均結果では、二人以上の世帯の貯蓄現在高の平均値は2059万円です。公表日は2026年5月19日。2026年に公表された、2025年の結果を読んでいます。2026年の貯蓄額という意味ではありません。

2025年平均結果・二人以上の世帯(単位:万円)
代表値金額貯蓄0の世帯
平均値2059含む
貯蓄保有世帯の中央値1264除く
0を含む中央値(参考値)1167含む

出典は統計局の概要PDF、表Ⅰ-1-1と脚注です。「家計簿からみたファミリーライフ」第4章も、0を含む中央値を1167万円と説明しています。1264万円と1167万円は、同じ対象を二通りに計算した値ではありません。誰を並べたかが違います。

平均2059万円と中央値1264万円をそのまま比べると、計算方法の違いに加え、0の世帯を含めるかという違いが入ります。対象をそろえて比較するなら、0を含む平均2059万円と、0を含む中央値1167万円です。差は892万円。それでも差が残る理由を、次の仮の例で確かめます。

ここでいう世帯は、一人ひとりではなく家計のまとまりです。二人以上の世帯の数値を、単身世帯や中学生個人の預金額の答えにすることはできません。調査の対象を読む姿勢は、30人から全校を考える標本調査の記事ともつながります。

2. 仮の5世帯を点で描くと、平均と中央が離れる

平均値は、データの合計をデータの個数で割った値です。中央値は、データを小さい順に並べたときの中央の値です。5個なら3番目を読みます。平均は金額の合計を使い、中央値は並べた順位を使う。この違いを点の図で見ます。

教材用に、A世帯0万円、B世帯100万円、C世帯200万円、D世帯300万円、E世帯1400万円と仮定します。実在の家族の貯蓄ではなく、日本の分布を再現したデータでもありません。1点が1世帯です。横軸の同じ長さが同じ金額を表すように描きます。

教材用の仮の5世帯の点の図。貯蓄額の横軸は0から1400万円、200万円ずつ等間隔。Aは0、Bは100、Cは200、Dは300、Eは1400万円。小さい順の3番目Cの200万円が中央値。平均400万円の位置には世帯の点がない。
仮の5世帯。点の横位置は金額、1点は1世帯。平均の位置に実際の世帯がいるとは限りません。

合計は0+100+200+300+1400=2000万円です。平均値は2000÷5=400万円。等号の右側は、左側の計算と同じ量を表します。合計2000万円を5世帯で均等に分けたら、1世帯あたり400万円になる、という換算です。現実にお金を分けたわけではありません。

小さい順は、0、100、200、300、1400万円。中央の3番目は200万円です。両側に2世帯ずつあることを確認すると、中央値の選び方を確かめられます。平均400万円を持つ世帯は、この5世帯にはありません。平均も中央値も、必ず実在する「普通の家」を指す名前ではないのです。

今度はE世帯だけを2400万円に変えてみます。合計は3000万円、平均は3000÷5=600万円です。残り4世帯の金額は変わっていないのに、平均は200万円上がりました。小さい順の3番目は変わらず200万円なので、中央値は同じです。

大きな値がさらに大きくなると、合計を使う平均は動きます。中央値も常に不変ではありません。中央付近の値が変わる、個数が変わる、順位が入れ替わると動きます。違いを確かめたいときは、データの分布の実験室で元の値と代表値を行き来できます。

3. 0の世帯を除くと、真ん中の順位も変わる

貯蓄0の世帯を含めるか除くかは、計算前に決める対象の条件です。仮の5世帯からAの0万円を除くと、100、200、300、1400万円の4世帯になります。4個のデータの中央は、2番目と3番目の間です。

仮の世帯を金額の小さい順に並べた比較図。0を含む5世帯は0、100、200、300、1400万円で3番目200万円が中央。0を除いた4世帯は100、200、300、1400万円で中央の2つ200と300の平均250万円が中央値。箱の間隔は順位を表し金額の差ではない。
仮の例。箱は順位の図で、金額の距離を表しません。0を外すと、個数と中央の位置が変わります。

データが偶数個のとき、中央値は中央の2つの値の平均を使います。この4世帯では(200+300)÷2=250万円です。平均値も、合計2000万円を4世帯で割って500万円になります。合計が同じでも、割る世帯数が減れば平均は変わります。

0は「データがない」の印ではありません。この仮の例では、貯蓄額が0という値です。Aを除く操作は、5世帯の平均を計算し直すのではなく、貯蓄のある4世帯について別の問いに答える操作です。未回答や不明を勝手に0にすることもできません。

2025年の公表値で中央値が1264万円と1167万円に分かれるのも、対象の条件が異なるためです。ただし、実際の統計の個票は手元にありません。仮の4世帯の計算は中央値の基本を学ぶ例で、公式統計の集計処理をそのまま再現したものではありません。

対象をそろえるときは、「二人以上の世帯」「2025年平均」「貯蓄0を含む」をセットで書きます。代表値の名前だけそろえても足りません。データの分布の問題集でも、表の題と単位を読んでから、比べる根拠を自分の言葉で説明できます。

4. 平均は役立つ。でも、家計の合格点にはならない

総務省統計局「家計簿からみたファミリーライフ」第4章によると、2025年は貯蓄現在高が平均値を下回る世帯が全体の約3分の2です。平均より下は半分、と決まっているわけではありません。仮の5世帯でも400万円を下回るのは4世帯で、5分の4でした。

私は、この統計が平均だけでなく中央値と分布も示している点を評価します。金額の総量を見る材料と、世帯を順に並べる材料を読み比べられるからです。平均は合計と個数をつなぐ値なので、全体の規模を考えるときに役立ちます。差があるから平均を捨てればよい、と私は考えません。

ただ、数字を紹介する側には、対象を金額と同じ場所に書いてほしいと思います。「平均2059万円、中央値1264万円」だけでは、0の扱いが見えません。脚注までたどれば条件は分かりますが、見出しを読んだ中学生が、その差まで知っているとは限りません。

私はこう考えます。平均貯蓄額を、その家の合格点にしてはいけない。 不動産の金額を考えるときと同じく、誰の、何の金額かに戻して読むべきです。中央値に届くかより、家族が使えるお金と、これから必要な支出を分けて考えたい。これは私の意見で、特定の家庭の相談を再現した話ではありません。

私は、中央値なら生活の実感に近い、とどこまで言ってよいか迷います。並べた中央という意味は明確です。それでも、年齢、世帯人数、借入れ、予定している支出は、1つの代表値から分かりません。中央値の額を持つ家が、どんな暮らしなのかも、この数字だけではわかりません。

貯蓄現在高は、その期間に増えた金額とも、毎月の収支とも別です。統計の貯蓄には預貯金だけでなく、有価証券や生命保険なども含まれます。全額が今日使える現金とは読めません。小遣い帳の収支と残高を分ける記事から、入ってきた額と今ある額の違いも確認できます。

地域の人数も、全体との関係を確かめると読み方が変わります。磐田市の5地区の人口を人数と割合で読む記事では、全市を分母にした表と棒グラフを見比べられます。

5. 今日、ニュースの数字に3行を書き足そう

貯蓄の平均値と中央値を比べるときは、対象、計算方法、分布の順に確認できます。今日できることは、ニュースの金額の横に「誰の話か」「0を含むか」「平均か中央か」の3行を書き足すことです。情報が載っていない行は、不明のまま残します。

2025年の例なら、二人以上の世帯、0を含む、平均2059万円。対象をそろえた中央は1167万円です。次に公式の分布図を見て、平均の左右に世帯がどう分かれるかを確かめます。「平均未満だから少数派」という予想は、約3分の2という事実で修正できます。

自分で試すなら、仮の5世帯を紙に書き、Eの1400万円を別の額に変えてみよう。合計を5で割った値と、並べた3番目を、それぞれ求めます。どちらが動いたかを説明できれば、データの分布の教材で学ぶ「代表値と元データを往復する」見方を使えています。実際の家庭の金額を聞き集める必要はありません。

平均は合計を、中央値は順番の中央を伝えます。どちらも集団を見る道具です。集団の数字から1軒の暮らしまで決めつけず、分かることと分からないことを分ける。その一手間で、貯蓄のニュースは自分で読める材料になります。

公表資料や数値は更新されることがあります。この記事の5世帯は学習用の仮の例です。個別の家計や税務、金融商品の判断は、ご家族や必要に応じて専門家に確認してください。

よくある疑問

平均貯蓄額より少ない世帯は、半分なの?

平均値より下の世帯が半分とは限りません。平均は金額の合計を世帯数で割る値で、順位の中央ではないからです。2025年の二人以上の世帯では、平均2059万円を下回る世帯が約3分の2です。仮の5世帯では平均400万円より下が4世帯あります。平均と中央値を区別し、分布も確認すると、どこに世帯が集まっているか読めます。

中央値なら「普通の家庭」の貯蓄額になる?

中央値は金額の小さい順に並べた中央の値で、典型的な生活をする家庭の金額を決めるものではありません。年齢、人数、借入れ、これからの支出は代表値だけでは分かりません。偶数個のデータでは中央の2値の平均を取るため、その額を持つ世帯がいない場合もあります。集団の中央を見る道具として使い、個別の家計の評価とは分けます。

2025年の中央値は1264万円と1167万円のどちら?

対象が違うため、どちらも公表値です。2025年の二人以上の世帯で、貯蓄0の世帯を除く貯蓄保有世帯の中央値は1264万円。0を含む中央値は参考値の1167万円です。平均2059万円は0を含みます。平均と対象をそろえて比べるなら1167万円を使い、1264万円を示すときは「貯蓄保有世帯」と条件を添えます。

参考にした一次資料

資料確認日:2026-10-05。例題の金額・人数・場面は学習用の設定です。実際の価格や学校の決まりは、それぞれの条件を確認してください。